ayya # 080 死んでも君をはなしはしない。

  子供の科学10月号によれば、クモは頭に「触肢」と呼ばれる突起があり、成熟したオスの触肢は生殖器として機能するそうである。オスはこの触肢をメスの生殖孔に挿入することによって交尾をするという。

  ところがキマダラコガネグモの雄は交尾中に自動的に死ぬことがあるそうである。つまり二本ある触肢を二本ともメスの生殖孔に挿入すると数分後に自動的に死ぬのだそうである。いわば腹上死というやつである。ところが本体は死んでも、触肢はメスの生殖孔に残ったままとなり、別のオスが交尾しようとしても困難なのだそうである。 ようするに自らは死してもそのメスを確保して子孫を残そうという涙ぐましい努力である。

  こういうオスのヤキモチ焼きないしは独占意欲というやつはサルなんかでも強いものが多くて、一夫多妻制のみられる種が多い。哺乳類全体では雌雄同型の動物では一夫一婦制が多く、雌雄に形態差が大きいものでは一夫多妻制となる傾向があるそうであるが。ニホンザルのボスザルなんてのは凄まじいものがある。ようするに群れのほとんどのメスは彼の配偶者であるそうな。

  ところで自己の遺伝子を残すということを生物の目標として想定した場合、一夫一婦制というものはメスにとってよりはオスにとって、とくに評価の低くなりがちなオスにメリットがある。なんとなれば、メスの側は一夫多妻制であっても自己の遺伝子を残すことができるし、より生存に有利であろう遺伝子との組合せで残すことができるからである。この場合一にぎりの「優れた」オスだけが大量に遺伝子を残すことに成功するが、その他大勢のオスはそのチャンスを奪われることになる。

  かくてメスをめぐりオスは激烈な争いをし、それに勝利したほんのひとにぎりのオスだけがメスと交尾し、子孫を残すことになる。この見地からはメスがいつのまにかよそから遺伝子をもらってきた場合は自分の遺伝子が残る可能性がその分減るわけだが、逆のケースではメスにはそれほどのデメリットはない。かくてオスのヤキモチ焼きはすさまじく、そのくせ自分はあちこちで遺伝子をバラまこうとすることになる。

  いずれにしてもオスにもメスにもハードそうな社会である。もちろん人類にもこの手の社会は相当数報告されていて、ごく一握りの富裕な男性があらかたの女性を独占してしまう社会なんかがこれである。

  ただし、人類にもっとも近いといわれるチンパンジーやなんかは多夫多妻制で、といってもオスは子育てはしないそうな。

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2003/9/28